薬の服用

  • 執筆 大西 昇 (薬学博士)

  • 薬の服用に関連することを、こどもを中心にいくつかご説明します。

  • 薬の剤形
  • 薬の服用方法
  • 上手な薬ののませ方
  • 薬の保管
  • 薬の保管
  • 薬の保管
  • 薬の剤形
  • 薬は服用しやすくしたり、薬の効果を正しく発揮させたり、また副作用がおこらないようにするために、さまざまな剤形が考えられています。
  • 錠剤、カプセル剤、顆粒剤、トローチ剤
  • 錠剤、カプセル剤、顆粒剤は、原則として服用のときかんだり、つぶしたりしてはいけません。
    錠剤を幼児がすぐのみこめるかは、大きさにもよりますが、5才児で50%前後、4才児で30%前後という調査もあり、のめないからといって、すぐにつぶしたりしないで、あらかじめ医師または薬剤師に相談してください。
    口腔内殺菌のためのトローチ剤では、すぐにのみこんでは効果が期待できません。トローチ剤は、口、のどなどの粘膜に直接、作用させることが必要です。服用方法としては「かみくだいたり、そのままのみこんだりしないで、口の中でしゃぶって溶かすこと」と指示されています。
  • 液剤
  • 液剤のなかには、薬が水その他の液体に溶けないため、微粒子にして懸濁(液中に分散)させてある場合があります。シロップ剤や外用のぬり薬、点眼薬にもこの剤形の例があり、その微粒子(主成分)が沈澱していることがありますので、よく振ってから使用するよう心がけてください。
  • 坐薬
  • 坐薬の使い方は、アルミ、またはプラスチックで包まれたものが多いので、包みを破り、中の薬を取り出します。ティッシュペーパー、またはカーゼなどでつまみ、とがった方から肛門内に十分挿入し、坐薬が出てこないよう、しばらく押さえます。挿入後、あぶら様の排泄物がにじみ出ることがありますが、薬の基材(形を整えるための成分)が溶け出たものですので心配はいりません。坐薬の挿入時間は、医師などの指示によりますが、できるだけ排便後に使用してください。
    坐薬を分割して使用する時は、坐薬を横に2分割しないで(薬の成分が上・下でバラついていることがあります)、縦に切り、手で少し形を整えて使用してください。
  • 吸入剤(エアロゾル)
  • 吸入剤(エアロゾル)の吸入のしかたはそれぞれの製品により少しずつ異なっているので、添付文書をよく読んでそれにしたがってください。どの製品にも共通して言えることは、連続して2回以上吸入する場合は、あいだにひと呼吸おくようにすることです。吸入剤は内服薬や注射剤に比べ少ない量で十分な効果を期待できます。

  • 薬の服用方法
  • 一般に薬は使用目的、薬の性質、薬の剤形などによって、その服用方法や服用時間が決められており、指示どおりに服用しないと効果が現れません。服用方法の指示、注意は、病院・診療所で投薬された薬はその薬袋に、また薬局などで購入された薬はその薬の添付文書に記載されています。
    ふつう、錠剤やカプセル剤を服用するときには水、またはぬるま湯でのみますが、お茶や牛乳でのんでも特定の薬以外は別に問題はありません。
  • 水:薬を水とともに服用するのは、のみやすいということだけでなく、薬をはやく溶かして確実な効果をのぞむためでもあります。水なしで服用すると吸収がとても遅くなり、薬の効きめを期待できなくなることがあります。たとえば、テトラサイクリン系の抗生物質を寝る前に服用したところ、食道内にとどまり、食道潰瘍をおこした例もあり、一般に寝る直前に服用するときは多めの水でのんでください。また、冷たい水よりもぬるま湯で服用すると吸収が促進され、鎮痛剤などでは薬効がはやく現れるという利点があります。
  • お茶・緑茶・紅茶・コーヒーなどは、その成分であるタンニン酸と薬が結びついて、溶けにくい物質を作り、そのため薬の吸収が悪くなる例があります。昔から貧血治療薬の鉄剤をお茶でのんではいけないと言われていたのはこのためですが、研究の結果、今では、実際の治療効果にはお茶の影響はほとんどみられないと考えられています。
  • 牛乳:薬による胃の刺激をふせぐ目的で、通常は牛乳とともに服用しても問題はありません。しかし、乳児の場合はあまりすすめられません。また、牛乳による服用で問題がおこる場合もあります。腸溶製剤のように、胃で溶けず、腸にはいってから溶け効果をあらわす薬では、牛乳と同時にのむと、牛乳により胃の酸性が弱くなるために薬剤が胃のなかで溶け、胃を刺激します。たとえばある種の下剤は、胃で溶けると嘔吐の原因となります。また、テトラサイクリン系抗生物質では牛乳中のカルシウム、マグネシウムと結合して吸収が悪くなるので、牛乳とともに服用してはいけません。

  • 上手な薬ののませ方
  • 乳児に薬をのませるには工夫と注意が必要です。まず原則として授乳後はさけます。授乳後に薬をのませると、これをきらって薬だけでなく、さきにのんだミルクまで吐いてしまうことがあります。薬を牛乳やスープにまぜてのませることも、すすめられません。薬の味やにおいが牛乳にうつりますので、牛乳ぎらいの一因となったりします。粉薬をのませるには水とまぜてスプーンで与えるか、水でかたくねって上あごにつけてやります。このとき砂糖などの甘味料、また場合によっては果汁などをまぜてもよろしい。どうしても薬をのむのをいやがる子供もいます。このようなとき、強制するようなことは望ましくありませんが、薬をのむように頼んだり、薬をのんだらお菓子をあげるというようなこともできるだけしないでください。苦い薬を甘いと言ってのませることも親子の信頼関係にかかわります。かえって、薬をのむのは当然のことである、と強い態度でのぞみ納得させると、あとは素直にのむようになるものです。それでものまない場合は医師に相談してください。
    薬をのんだあとはいやな味が残ります、また水に溶けることによって薬は吸収されますから、必ずあとで充分に水を飲ませてください。

  • 薬の保管
  • 薬の保管を正しくすることは、薬を安全に使用し、効果を充分に発揮させるために、きわめて重要な問題です。保存状態が悪くて不良となった薬を知らずに服用すると、薬効が期待できないばかりか、思わぬ副作用の原因となることもあります。
  • 薬を保存できる期間
  • 一般に、現在つくられている薬の大部分は製剤後3年くらいはもつように工夫されています。
    しかし、それは開封するまでの条件で、封を切ると比較的短期間のうちに変質しやすくなります。たとえば、シロップ剤や点眼薬では使用後の保存状態が良くても、2~3カ月が限度ですし、包装された錠剤でも、梅雨どきですと2~3週間ももたないものもあります。薬に変化・変質がおこっているかどうかを見分けるには、たとえば外観の変色、軟化などがみられるとき、たいていは成分の分解をともなう化学変化をおこしています。
  • 薬の保存方法
  • これらの変化に影響するのは、湿度・温度・光の3つがおもな原因です。そこで、包装された散剤、錠剤、カプセル剤は乾燥剤を入れたかんに入れ涼しいところに置きます。軟膏、水薬、坐薬、点眼薬はとくに冷所の指示がないかぎり室温で保存してよいわけですが、夏期温度の高いときや長期間保存するときは、冷蔵庫に入れておきます。
  • 薬を保管する時に気をつけること
  • 保存状態のほか、薬の保管にはつぎのことにも注意が大切です。まず、乳幼児・小児の手のとどかないところに置くことです。最近の薬はのみやすいように甘味や香りをつけたものもあり、乳幼児・小児がお菓子と思い、誤飲して中毒をおこすことがあるので注意してください。また不要になった薬をすてるときも包装から薬を取り出し、子供の目にふれないよう処分してください。
    つぎに、薬の保管は、消毒薬などの外用剤を内服薬と間違って誤飲したりしないように区別して置いておくほか、農薬、殺虫剤、化粧品などとも、やはり誤用をさけるため一緒に保管してはいけません。赤や黄などきれいな色をつけた糖衣錠や、いつも手のとどくところに置いてあるビタミン剤などは、子供がお菓子と間違えて飲んでしまうことも少なくありません。マニキュアの容器が水薬ビンに似ていたために、マニキュア液を誤ってのんだという例もあります。また同じ意味で、薬を使い古しの他の容器に入れ替えることは、内容や使い方がわからなくなり、誤用や事故のもとになりますので、入れ替えないようにしてください。ヒートシールごとそのまま飲んでしまうこともあります。とくに何種類かの薬を1回分ずつに分けホッチキスでとじたりしている人に多いようです。このような事故をおこさないために、ヒートシールをもとの大きさのシートのままでおいておき、服用時間ごとに中の薬剤だけを取り出して服用するようにしてください。

  • 誤飲
  • 薬にかぎらず、子供、とくに乳幼児はいろいろなものを口にもっていき、誤って飲み込んだり気管に入れてしまったりすることがよくあります。まちがって気道に入りやすいものには、ピーナツがあります。飲み込んで消化管に入りやすいものにはガラス玉、硬貨などがあります。
    気道に異物が入ると、突然せきこみ、そのあと咳、喘鳴がつづきます。食道に入った時には、食べ物を飲み込みにくくなったり、飲み込むときに痛んだり、食欲不振などがみられることもあります。しかし、さらに胃や腸までおりてしまうと、ふつう何も症状がみられなくなります。
    誤飲に気付いたときには、できれば誤飲したものと同じものを持参して医師にかかってください。

  • 薬物中毒
  • 子供が間違って薬をのんでしまったり、指示された用量以上にのんでしまったとき、あるいは薬物中毒と思われる症状が見られた時には、まず子供の状態を落ち着いて観察してください。
  • 緊急を要する場合
  • 非常に重い中毒症状をしめしていれば緊急に、その症状を改善する治療や輸液を行わなくてはなりません。できるだけ早くかかりつけの医師・病院・診療所などに連絡し、救急車を呼ぶなどしてください。
    非常に重い症状とは、鼻翼呼吸・努力呼吸などの呼吸障害、チアノーゼ、体が冷たいなどの循環障害、興奮・昏睡・痙攣などの精神神経症状などです。このように非常に重い状態でなければ、医師・病院などへ連絡するかたわら、家庭で次のような処置をしてください。
  • 家庭でできる処置
  • 意識不明・痙攣・吐血などの症状がみられず、石油類・強酸・強アルカリなどの誤飲でなければ、できるだけ早くコップ1~2杯以上の量の水か牛乳を飲ませます。ただし、ナフタリン・ベンジンなど水よりも油脂にとけやすい薬物の場合には、絶対に牛乳は飲ませてはいけません。 次に子供を親のひざの上に腹ばいにさせて子供の頭を下にし、指かスプーンを口に入れて舌の根元を強く押さえて吐かせます。その後、卵1個分の白身を飲ませてから、できるだけ早く病院や診療所などへ連れていってください。ただし、意識のうすい状態の時に吐かせると窒息のおそれがありますので、そのような時には医師の指示を受けた方がよいでしょう。
  • 医師に連絡すべきポイント
  • 家庭でできる処置をほどこす一方で、その前でも後でもよいですが、医師や病院などに連絡します。このとき、以下のポイントを簡単にメモしてからダイヤルするようにしましょう。
  • 1)いつ薬物、あるいは毒物をのんだか
    2)何をのんだか
    3)どのぐらいの量をのんだか
    4)今までにどのような症状がみられたか
    5)その症状はどのように変わってきたか
    6)今までにどのような処置をほどこしたか
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